光操作によってトラウマが消去?

WHOも認定するPTSD治療の有効な方法

人は誰しも1つくらいは忘れてしまいたい思い出があるものです。
もしそこで「光を使った治療でその記憶を消してあげます」と言われたらどうでしょうか。
おそらく多くの人がオカルトやファンタジーのように思ってしまうことでしょう。

しかし本人の心理に重大な悪影響を及ぼす記憶をなくすための治療法である「EMDR」は2014年よりWHO(世界保健機関)も推奨している至って真面目な心理療法です。

EMDRとは「Eye Movement Desensitization and Reprocessing」の略称で、直訳をすると「眼の動きの減感と再処理」となり、1989年にアメリカの臨床心理士が行った心理療法をもとにしたものです。

現在では日本にもこの治療法は広く導入されており、日本EMDR学会という組織が中心となって研究がされています。
日本EMDR学会(JEMDRA)の公式サイトでは、正式なEMDR治療を受けた人のリストを参照することもでき、全国各地で治療をすることができる臨床家を案内してくれています。

冒頭では多少大げさに書きましたがこのEMDRが治療対象としているのは主にPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された人です。
PTSDは大きな事故や災害など大きなショックとなる出来事を経験することにより、日常生活に戻ったあともフラッシュバックや大きなストレスに悩まされるようになる症状のことです。

EMDRでは患者の眼球部分に光を当てて左右に動かすことにより、そのつらい記憶をなくすことができるよう脳神経に働きかけていきます。

眼球の動きが脳神経を動かすということ

このEMDRを使った心理療法は日本だけでなく世界中で臨床例が報告されています。
しかし一方でなぜEMDRを受けることでPTSDのようなつらい記憶を消すことができるかということについては、はっきりとしくみが解明されているわけではないのです。

昔から視神経が脳神経と深い関わりを持っているということは言われてきたことです。
意図的に眼球運動をさせることにより現状を把握する作業記憶を混乱させられるため、それが心の深い部分に傷となって残っている記憶をぼやかせることができるのではないかと仮説が立てられています。

作業記憶とはものを瞬時に判断するときに使用するもので、例えば瞬間的に計算式を提示されたときにパッと計算を行ってしまうようなとき使われます。

EMDRは光を左右に動かすことで眼球運動を促しますが、これを眼球全体の動きに発展させた「IEMT」という方法も誕生しています。
今後も研究は進められていきますので、これからの心理療法で大きな広がりを見せるかもしれません。